移転価格税制について⑤

今回は移転価格税制における二重課税の排除手段のひとつ「相互協議」と、二重課税を予防する
「事前確認制度」について、ご説明いたします。

(5)相互協議と事前確認制度

1)相互協議

「相互協議」とは、租税条約の規定に基づき、条約締結国の税務当局間で行う二国間協議です。
租税条約の規定上は、相手国において「条約の規定に適合しない」課税を受けた場合や、受ける
場合に、そのような課税を排除するため、双方の税務当局による協議を求めることができるもの
です。

①相互協議ができる場合

納税者は、移転価格税制に関し、次の場合には相互協議の申立てを行い、税務当局間の協議を
求めることができます。

・国外関連者との取引に関し、日本又は相手国において移転価格課税を受けた、又は受ける
に至ると認められる場合

・国外関連者との取引について、二国間の事前確認の申し出を行う場合

②申立ての手続き

相互協議の申立ては、「相互協議申立書」を国税庁相互協議室に提出することにより行います。

③納税の猶予

日本において、移転価格課税が行われたことに基づいて相互協議の申立てをする場合、申立者
は、更生決定により納付すべき法人税の額、及び加算税の額について納税の猶予を申請すること
ができます。

2)事前確認制度

移転価格税制による課税は、国外関連取引が「独立企業間価格」で行われていないと認定する
ことを根拠としています。したがって、国外関連取引が独立企業間価格であれば、税務調査時
に課税を受けることはありません。

納税者企業が、後日の税務調査で移転価格課税を受けないよう、納税者が事前に申し出た
独立企業間価格の算定方法等について、税務当局が確認を行い、納税者が確認された内容に
基づき申告を行っている限り、国外関連取引が独立企業間価格で行われたものとする制度が
「事前確認(Advance Pricing Arrangement:APA)です。

この事前確認には、日本国内のみの事前確認(ユニラテラルAPA)と、国外関連者の所在する
相手国も含めた事前確認(バイラテラルAPA)があります。

①事前確認の申出

バイラテラルAPAを申請する場合には、事前確認の申出に加えて相互協議の申立てを行う必要が
あります。事前確認申出には、確認を受けようとする事業年度、国外関連者、確認の対象となる
国外関連取引、独立企業間価格の算定方法等を記載します。

また、事前確認申出期限は事前確認を受けようとする事業年度の最初の事業年度の開始の日の
前日となり、事前確認事業年度は、原則として3事業年度から5事業年度とされています。

移転価格課税は、国外関連取引の相手方の課税リスクも併せて排除しなければなりませんので、
二国間の課税当局双方が確認できる独立企業間価格の算定方法でなければなりません。
双方の国の課税当局が同時に確認・合意できる事前確認が望ましく、それを実現する手段の一つ
が前述の「相互協議」となります。

相互協議事案全体の発生件数のうち、約80%を事前確認に係るものが占めています。


 

バイラテラルAPAの申出について相互協議の合意が成立しなかった場合には、申出法人に対して
申出を取り下げるか、又はユニラテラルAPAに変更するかについて意見聴取が行われ、その意見
に沿って処理が行われます。

 

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以上、今月は5回にわたって「移転価格税制」についてご説明いたしました。

7月より全国の国税局などに移転価格税制における相談窓口が設置され、取引価格の算定方法や、
利益率の設定が適正かどうかなどの相談に応じたり、実際に企業を訪問してアドバイスも行う
ことを開始し、相談しやすい環境が整っていますので是非活用してみてください。